小林勝2022(3)のHP

2023.9.25

 

<参照・引用/TBS NEWS> 2022.3.31 小林 勝

【速報】政府 首都キエフの呼称を「キーウ」に変更、ウクライナ語読みに

 ウクライナ首都の呼称 「キーウ」に

  TBS NEWS

 

<参照・引用/毎日新聞>

ウクライナ情勢 2022.3.20 小林 勝

ロシアを学び知る意味とは

侵攻に抗議した東京外語大・沼野恭子教授に聞く

 3/20(日) 12:00配信  毎日新聞

 

 

<参照・引用>

ロシアによるウクライナ侵攻に反対し、行進する人たち=大阪市北区で2022年3月9日午後、山田尚弘撮影(毎日新聞)

ウクライナに侵攻したロシアへの抗議が世界で広がっている。7日には東京外国語大ロシア語専攻の教員5人が公開抗議声明を出した。その一人、沼野恭子教授は侵攻は許しがたい暴挙だとした上で、ロシアの人々に対する差別や、言葉、文化を排除する動きが日本でも出始めていると懸念する。国際秩序を揺るがしかねない戦争のさなか、ロシアを学び、知る意味を尋ねた。

 

◇ よみがえる帝国主義

 侵攻をどう捉えていますか。

 ――過去の遺物だと思っていた帝国主義がよみがえってきた感があります。ロシアは帝政期、スターリン時代と強権独裁がたびたび現れました。スターリン死後の社会を小説「雪解け」(1954年)で著したエレンブルグの比喩を踏まえて言えば、再び「冬の時代」に戻ってしまうのではないでしょうか。

 時代によって濃淡はありますが、ロシアの文学や芸術は圧倒的な権力の下で生まれてきました。自由が制限された中で、ここまでは表現できるという権力とのせめぎ合いがあり、自由の地平を広げていった。

 ソ連最後の指導者ゴルバチョフ氏がペレストロイカ(立て直し)を始めた80年代後半から、検閲が激減した影響で、非常に多様な作品が世に出てきました。文学でも伝統をくむものから、幻想的なものまでレベルの高い作品が一気に噴出した。

 しかしプーチン政権は言論を統制するなど、復古主義的な色彩を強めています。

 

反対を叫ぶ人と連帯を

 抗議声明では戦争に反対するウクライナ、ロシアなどの人々を支持し、連帯する、とあります。

 --今、ロシア国内で戦争に反対する声を上げるのは命がけの行為です。それにもかかわらず、数万人の市民がデモに参加し、多くの文化人がSNS(ネット交流サービス)で抗議の意思を表しています。

 現代ロシアを代表する作家、リュドミラ・ウリツカヤは侵攻直後にこう述べています。「痛み、恐怖、恥--。それが今抱いている感情です。(略)恥を感じるのはなぜかといえば、我が国の指導者が、全人類に大惨事をもたらす状況を作り出した責任があることは明らかだからです」

 ロシアでは「戦争」という言葉を使うことを禁じられたため、独立系新聞「ノーバヤ・ガゼータ」は報道を続けるために、それを使わないことを選びました。これもまた、表現を工夫する、行間を読ませるというロシアの伝統といえます。

 私たちはこうした人たちと連帯する必要があるのです。

 

複雑なものを理解して

 その一方で、日本でロシア料理店のホームページに中傷が書き込まれるなど「ロシア」にまつわるものへの反感も出ています。

 --戦争に反対する気持ちは当然ですが、それを言葉の暴力や物理的な暴力で表現することは許されません。弱い立場に置かれているロシアからの留学生やロシア語を学ぶ学生も守られる必要があります。

 物事を単純化しすぎるのは注意が必要です。ロシアとウクライナはともに9世紀後半に成立したキエフ公国の流れをくみます。19世紀のウクライナ出身の作家ゴーゴリは母から聞き取った話を元にした「ディカーニカ近郷夜話」をロシア語で発表し、ロシア文壇で注目を集める存在になりました。文化や歴史、言葉。どれをとっても複雑な関係なのです。

 ロシアの一部にはウクライナを「小ロシア」と呼んで下に見る傾向があり、プーチン大統領の演説にもこの歴史認識がうかがえます。こうしたロシアの為政者の抑圧的な姿勢も両国の関係を知ることなしには把握できません。複雑なものを複雑なまま理解する。これがウクライナやロシアを研究することの意味だと思います。

 

言葉を学ぶ大切さを知ってほしい

 まもなく新年度が始まります。ロシア語を学ぶか悩む新入生もいるかもしれません。彼ら、彼女らへのメッセージを。

 ――ロシア語に限りませんが、ある地域に住む人たちの感情や思考を本当に理解するには、そこで使われている言葉を知ることが大切です。もちろん今回のような紛争をすぐに止めることはできないし、遠回りでもあります。学生には外国語を学ぶ意味とは何なのか、という問いも含めて、少し長くやっている教師とともに考えていきましょうと言いたいですね。【聞き手・林哲平】

 

◇ 沼野 恭子 ぬまの・きょうこ

 

 東京外国語大ロシア語学科卒業、東京大大学院博士課程単位取得満期退学。専攻はロシアの近現代文学。訳書にL・ウリツカヤ「女が嘘をつくとき」「ソーネチカ」(いずれも新潮社)など。